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だいぶ前、米国に1年近く住んだことがある。

スーパーに行って、初めて見る食品などを手にとっては、パッケージに書いてある原材料や栄養成分、レシピなどを読むのが楽しみの一つだったが、実際に買いたいものの中で、見つけるのに一番時間がかかったのは、パン粉だった。透明な袋に入ったパン粉をイメージしながら、小麦粉などの棚を端から端まで見るのだが、いくら探しても無い。ある日ようやく発見したパン粉は、中の見えない小さな紙箱に入って、パン売り場の隅に置いてあった。そういえばメキシコでも、パン粉はパンと並んでいるし、作っているのもパンのメーカーだ。

ところでこのパン粉だが、米国でもメキシコでもペル-でも、パン粉といったら文字通りパンの粉で、非常に細かくサラサラしている。だから、日本の“トンカツ”を作るときは、日本製の”panko”を使わなければいけないと、アメリカの料理番組でも、メキシコの調理学校でも、そう教えているのだ。
トンカツが立派な日本料理だと認識したのは、これが、日本の材料を使わなければ作れないものなのだということを、知って以来のことである。