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メキシコでは、「嘘をついてもよい日」 というのが4月1日ではなく、12月28日なのだそうだ。そしてこれも、キリストの生誕に関連した習慣である。

キリスト生誕の際、ユダヤのヘロデ王は、新しい王(イエス・キリスト)がベツレヘムに生まれたと聞き、自分の地位が脅かされることを恐れて、ベツレヘムの2歳以下の男児を全て殺させたという(イエスは、お告げによりこのことを知った両親と共に、エジプトに逃れた)。12月28日は、このとき犠牲になった子供たちを記念する日で、“dia de los santos inocentes” ( 幼子殉教者の日) と呼ばれている。
スペイン及びラテンアメリカでは、この日は嘘や冗談が許されることになっていて、公共の媒体でも堂々と嘘が語られることがある。

今朝、Web版の新聞を開いてみると、こんなのを一紙見つけた。
上の画像がトップ頁で、ここには、「1月6日に iPhone5のメキシコ発売」「写真特集:レディーガガが女性と結婚」などというタイトルが並び、この頁のどの記事をクリックしても、出てくる画面は「本日12月28日は幼子殉教者の日、騙されないように気をつけて!」というようなメッセージである。だいいち “EXCELSIOR” という新聞の名前からして、この頁では “EXCELSO” だ。一ヶ所だけ、左上に小さく 「最新ニュース」 とあるところをクリックすると、本当のニュースにアクセスできるようになっている。

街の新聞スタンドも覘いてみたが、どうやら印刷された新聞はどれも本物のニュースばかりのようだった。Web 版が登場する前には、紙の新聞でも、外側1枚の4面分が全部冗談、などということがあったものだが、さすがに経費などの事情もあるのだろう。Web 版の新聞も、嘘の紙面は朝だけで、昼ごろには画像2枚目の普通の新聞に変っていた。

連日血なまぐさいニュースの絶えないメキシコで、こんな他愛のない嘘を並べた紙面を一番楽しんだのは、それを作る新聞社の人たちだったに違いない。
普段目を通すのは別の新聞なのだが、思わず “EXCELSIOR” もブックマークに入れてしまう、胡蝶なのだった。