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先日は100ペソ紙幣の顔、 ネサワルコヨトル をご紹介したので、今度は200ペソのお札。こちらは植民地時代の文学者、ソル・ファナ・イネス・デ・ラ・クルス (1651―1695) だ。

17世紀のメキシコで、女の身で生涯勉学を続け文学に生きるために、聡明な彼女が選んだ道は結婚ではなく、修道院に入る事だった。17歳にして、その学識で学者たちを驚嘆させたこの尼僧は、非常に明晰かつ理論的な思考のもとに、数多くの詩を書き、また、シェークスピアの喜劇を彷彿とさせるような、軽妙な台詞と筋立ての戯曲作品等も残している。

200ペソの紙幣に印刷されているのは、義務教育を受けたメキシコ人なら、誰でもが知っているはずの、彼女の詩の一節だ。
・・・メキシコのみならず、世界のスペイン語文学史上に燦然と輝く “10番目のミューズ” は、進歩的かつ痛烈な批判精神を持つ、時代に先駆けたフェミニストだったのである。



      理由もなく女を責める
      わからずやの男たち
      そなたら自身がその原因を
      作っている事にも気付かずに
      ・・・・・・・


なお、この傑出した女流詩人に関しては、その詩と手紙を解説とともにまとめた 「知への賛歌 -修道女フアナの手紙」 及び、メキシコのノーベル賞作家オクタビオ・パスによる評論 「ソル・フアナ・イネス・デ・ラ・クルスの生涯 -信仰の罠」 等の邦訳が、日本でも出版されている。