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最初にお断りしておくけれど、画像は、ネットから借りてきた。

メキシコ最小の州であるトラスカラの、州都まではメキシコシティーから、バスで2時間。そこから、ナナカミルパへの観光ツアーに参加して、ホタルの聖地を訪れた。ホタル科の昆虫は世界におよそ2000種も生息しているそうだが、ここにいるのは、学名 macrolampis palaciosi、体長2センチほどで、メスは翅が退化し飛ぶことができない。発光は配偶行動のためで、交尾・産卵を終えれば、雌雄ともに死んでいくばかりである。

ホタルが飛ぶのは、日暮れから1時間足らずの間。標高3千メートルに近い自然保護区では、人工の明かりや物音、携帯電話も禁止されている。黙々と歩く針葉樹の森の中、暗闇に一つ二つと飛び交う小さな灯りは、たちまちその数を増していく。光はすぐ目の前を横切ったり、人間の服や体に止まることもある。聞こえてくるのは、夕方の雨に濡れた木々から落ちる滴の音だけ。・・・ホタルたちの婚礼の宴は、この上もなく豪華で、そして哀しい。

腕も知識も機材も十分でない胡蝶は、そもそもホタルの写真を撮ること自体、最初から諦めていた。そして、「ナナカミルパ ホタル」 と検索すれば、まるでクリスマスのイルミネーションのように幻想的な美しい画像があふれているのだが、それは、人間の眼で見ることのできる光景と、かなり違っている。そうした画像の中から、自分が見た印象に一番近い(ただし、実際には全体がもっと真っ暗)と思えるのが、こんな画像だった。