3343封じられた微笑み


この数カ月の間に、マスクの使用が世界中に普及してきた。

欧米の国々では、もともとマスクの習慣が全くない。その事について近頃二つの記事を読んだ。内容はほぼ同じで、欧米の人たちは口元の表情を見るので、そこが隠されているのを、不安で不穏に感じるという事。対して日本人は、口元よりも目の表情を大事にするため、むしろサングラスをかけることを、礼儀に反すると思う。・・・これは納得、と思った。というのも、胡蝶自身が、マスクを使う事により、なんだかもやもやするところがあるからである


メキシコで他人と目が合ったら、目をそらすのではなく、微笑するのが一般的だが、マスクをかけていては、それができない。また今は、口を開くこと自体遠慮してしまうため、ひと言ふた言の挨拶も、しないで済ませてしまう。それが、とてもよそよそしく感じられて、居心地が悪い。仕方ないから最近では、軽く会釈しているのだが、微笑みの代わりという気持ちは、伝わっているだろうか。

自分の口元をプリントしたマスクはどうかしらと、大分前に思いついた。もちろん、同じ事を考える人は当然他にもいるわけで、そういうマスクを注文で作っている人が、もういるらしい。もっとも、目的としては、マスクをしたままの顔認証のためらしいけれど。

もともとマスクに慣れている日本よりも、これが新しい習慣となっている国の方が、マスクのデザインはずっと自由なようだ。微笑みを封じられた人々が、マスクを通して新たな自己表現を試みている、ということなのかもしれない。